第十二回学術総会報告
大会長 渡部亜矢子
去る2021年12月5日、第12回学術総会(大会テーマ:集団認知行動療法とジェンダー~グループでの「役割」を考える~)が開催されました。新型コロナ感染症対策のため昨年度に引き続きリモート開催となりましたが、70名の会員が参加されました。
特別講演として、アサーショントレーニングの第一人者、平木典子先生より「アサーショントレーニングの展開とその意義」と題したご講演を賜りました。アサーションの意味とその背景、人権としてのアサーションなどについてお話し頂き、誰もがアサーションする権利を持っている事などを確認し、グループでトレーニングするDESC法をご紹介頂きました。4つの自己表現のタイプ(非主張的、攻撃的、アサーティブ、攻撃的非主張的)のうち、攻撃的な自己表現は権力、権威、役割、地位、年齢を使って相手を思い通りに動かそうという意思が背景にある事をお教え頂きました。この表現をとり得るのは必ずしも男性だけでない事、あらゆる場面で起こりうる事、この自己表現方法は、本人にも後悔や孤立をひき起こすためデメリットが大きい事、などがジェンダーと関連して個人的には心に残りました。
引き続いてワークショップ「変容する治療者~「自分らしい」CBGTリーダーになるために」が行われました。草岡章大先生から心理臨床家の職業的発達段階についての知見を紹介頂き、その後、参加者がCBGTリーダーとしての経験年数別グループに分かれ、ブレイクアウトルーム機能を使って小集団で討議を行いました。終了後のアンケートでは「自分を振り返る良い機会になった」「実際に会場で会って話をしたかった」など嬉しい感想を頂きました。
ランチョンセミナー(大塚製薬共催)は、伊賀淳一先生より「高齢者のうつ病の最近の話題」についてお話し頂きました。高齢者のうつ病を治療している者にとって大変実践的、かつ日常臨床に非常に役に立つお話を頂きました。
最後はシンポジウム「様々な領域でのCBGTとジェンダー」です。シンポジストの大黒剛先生より、先生が刑事施設内で実施されている「性犯罪防止プログラムについて」のご報告、同じくシンポジストの石丸径一郎先生より「LGBTQと認知行動療法」をお話し頂きました。大黒先生のお話から、性犯罪にはセクシャリティの嗜好性だけではなく孤立や対人関係の障害など社会性な問題が隠されている事が分かりました。石丸先生からはLBGTは人口の8.9% であり決して少数派ではないという事、また彼らの特有の認知や行動などをご紹介頂き、彼らの生きづらさについて理解が深まりました。座長の中島美鈴先生から、日本は世界の中でジェンダー公平において遅れをとっている事なども紹介され、その後グループに分かれた討議では、それぞれのグループでCBGTとジェンダーについて活発な議論がなされました。その中で、「CBGTを実施するには自らのジェンダー意識や価値観を振り返っておくことが重要」という意見が多く聞かれました。一方、公平性や正しさなどを強調しすぎると日頃のコミュニケーションはギスギスしたものになってしまうという懸念も聞かれ、もっともな事だと思いました。グループ討議を含めて100分のシンポジュウムでしたが「時間が足りない」と感じた方が多くおられたのは嬉しい事でした。このシンポジュウムを通じて、立場や意見の異なる人々と共により良い問題解決に進むには、「自他尊重のアサーションの考え方・方法」を身に付ける事が大切だと改めて認識し、ふりだしに戻るという奇しくもループの状の構造をもった学術総会となりました。とても示唆に富んだ総会であったと自負しております。
最後になりましたが、参加者の皆様、講師の先生方、プログラム委員の諸先生方、そして大会を力強くバックアップして下さった事務局の伊藤利香氏には厚くお礼を申し上げます。
概要
大会テーマ | 集団認知行動療法(CBGT)とジェンダー ~グループでの「役割」を考える~ |
日時 | 2021年12月5日(日) 9:00~16:30 |
開催方法 | Zoomによるリモート開催 参加者には参加ID/PWをお送りします 当日は、Zoomを使用しますが、前もって準備をされたい方には、無料でZoom準備会を開催しますので、ぜひ練習を兼ねてお気軽にご参加ください |
定員 | 80名 |
参加資格 | 当会員限定となります 現在非会員で、総会への参加をご希望の方は、 参加費納入までに早めに入会手続きをお願いいたします |
参加費 | 4,000円 2021年11月22日(月)までにお振込み頂きますようお願い申し上げます 振込の確認をもってご参加の確定とさせて頂きます 振込先口座は参加登録された方にメールでお知らせいたします |
大会長 | 渡部亜矢子(公益財団法人正光会 広小路診療所) |
プログラム委員長 | 中野眞樹子(メンタルヘルスマネージメントIMS笑む笑む訪問看護ステーション) |
学術総会は日本精神神経学会専門医単位および、日本臨床心理士資格認定協会ポイント対象です
プログラム
特別講演 「アサーション・トレーニングの展開とその意義」 座長:秋山剛(NTT東日本関東病院) 演者:平木 典子(IPI統合的心理療法研究所) |
ワークショップ 「変容する治療者~「自分らしい」CBGTリーダーになるために」 座長:上田広大(北大通こころのクリニック) 演者:草岡章大(北海道大学大学院/北大通こころのクリニック) |
ランチョンセミナー (共催:大塚製薬株式会社) 「高齢者のうつ病の最近の話題」 座長:中野眞樹子(笑む笑む訪問看護ステーション) 演者:伊賀淳一(愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学) |
シンポジウム 「さまざまな領域でのCBGTとジェンダー」 座長:中島美鈴(九州大学人間環境学研究院/肥前精神医療センター/中島心理相談所) 演者:大黒剛(Jake Style 心理相談所) 石丸径一郎(お茶の水女子大学) |
参加申込
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